サッカー日本代表観戦記

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絶対に負けられない戦いに誤審で敗れたハリルジャパン、黒星発進でワールドカップ出場は0%

f:id:makot0:20160905134021j:plain 2016年9月1日、不敗神話が続く埼玉スタジアムにて、サッカー日本代表のロシアワールドカップアジア最終予選の初戦が行われた。

相手はUEA代表。アジアカップ準々決勝で敗れた相手だ。 試合前、香川やハリル監督は絶対にリベンジを果たすと誓った。 だが、またしても、苦杯をなめる結果に終わった。

試合前には「日本代表よりもUAE代表の方が詳しい」とまでハリル監督が言うほど研究し尽くしたにもかかわらず、アジアカップの時と同じようにやられてしまった。

不可解な判定による、直接フリーキックペナルティキックの2失点。さらに、同点と思われたシュートもゴールと判定されないなど、最後までジャッジに振り回される展開となった。

非常に後味の悪い敗戦だったが、この試合を振り返ってみる。

重大過ぎる誤審、幻となった浅野拓磨のゴール

冒頭にも書いたが、結論から言うと、あれはゴールだ。

横からのアングルでのスロー動画が放送されたが、明らかにゴールラインを越していた。にもかかわらず、あっさりとスルーされていることに僕は憤りを感じていた。

なぜ、ゴールと判定されなかったのだ?

というのも、ゴール判定の誤審は、試合結果を大きく左右するため、主審、副審とは別に、ゴール判定を主な責務とする追加副審をゴール脇に配置するのが常識になりつつあるからだ。Jリーグでも今シーズンから一部の試合に導入されている。

さらに、ワールドカップ等では、複数台のカメラやセンサーを用いてゴール判定を行い、その結果をリアルタイムで審判に伝える、ゴールラインテクノロジーという仕組みが試験的に導入された実績もある。

ゴールラインテクノロジーは高額な費用がかかるため、採用が難しいとしても、ワールドカップ予選という、サッカー関係者の人生を左右するような重要な試合なのだから、追加副審は入れるべきだった。

浅野本人が語るように、しっかりとミートしていればゴールネットを揺らす文句なしのゴールを奪うことができただろう。 とはいえ、このような大きい試合で、映像で見るとゴールラインを割ったのにゴールと判定されないのは、サポーターの興ざめを生み、サッカーの価値毀損にもつながりうる。

さらに、ここが日本でなければ、または、初戦ではなく、ワールドカップ出場するか否かが決まる最終戦だったとしたら、誤審をしたレフェリーは、マスコミや熱狂的サポーターからの激しいバッシングを受けていたことだろう。直接的な危害を加える者も出てくるかもしれない。そのような事態が増えると、レフェリーのモチベーション低下、人材不足につながりうる。

日本サッカー協会は、AFCに対して、早急に追加審判配置の申し立てをすると同時に、Jリーグでも同じ事故が起きないよう、全試合に追加副審を配置できるよう検討してほしい。

僕も学生の頃、プレイヤーとして同じような経験があるが、あれほど不条理なことはない。サッカーに誤審はつきものだが、ゴールに直接繋がる誤審は、プレーする側としても、努力しても報われないやるせなさを感じてしまう。もちろん、日本代表の選手たちは、すでに前を向いていると思うが、そのような経験を味わう者は少ないに越したことはない。

過去5大会、初戦黒星チームはいずれも本大会出場ならず

これは中継時にも説明されていたが、ホームアンドアウェイ方式となった過去5回のアジア最終予選で、初戦で敗れたチームは、全て、本戦出場を逃している。

あくまで過去5大会のデータだが、初戦が重要なのは、日本代表の国際大会での結果が物語っている。初戦で勝利し波に乗った、南アフリカワールドカップ、そして、ロンドン五輪。 一方、初戦で敗れた後、程なくして敗退となった、ドイツワールドカップ、記憶に新しいリオオリンピック。

サッカーに限らず、勝負事で一度ビハインドを追った者は、必然的に前掛かりとなり、リードしている者からすると、一発のカウンターで仕留めやすくなる。

日本代表は追うものとして、既に勝点を上げているオーストラリアやサウジアラビア相手に勝利することが求められる。タイやイラクといった格下相手に取りこぼすことはもってのほかだ。

近年の最終予選では経験のない黒星発進となったことで、残りの9試合、相当に厳しい最終予選となることが予想されるが、ワールドカップ出場の切符をもぎ取り、この統計を裏切ってくれることを切に願う。

2失点に絡んだ大島僚太の代表デビュー、だが落ち込む必要はない

ハリル監督は、ダブルボランチの1名に大島僚太を抜擢した。 ひとつ下のU-23カテゴリではほぼレギュラーとして常連ではあるが、A代表では初出場となる。この采配については、ざっとメディアを見た限りだと、批判の声が多そうだ。だが僕は、最終予選というプレッシャーの掛かる大舞台でA代表デビューを果たした大島のプレーを評価したい。

たしかに、大島が2つの失点に絡んだのは事実だが、いずれの失点も彼だけのミスかというとそうではない。1失点目は、ボールを失った後の対応もまずかった。まず、ボールを奪ったUAEフォワードのドリブルに対して、森重真人があっさりスピードだけでかわされてしまっている。加えて、カバーに回った吉田麻也も、判定に泣かされた面はあるが、不要なファウルだったと言えよう。結果論だが、相手が転倒しかけた瞬間に腕を上げてノーファールをアピールしていれば、あの判定はなかったのではないか。

大島のプレーに話を戻そう。 ハリルホジッチ監督は攻撃面での期待から、彼を抜擢したものと思うが、その期待通り、攻撃の起点となる縦パスを非常にタイミングよく供給していたし、キーパーのファインセーブに阻まれた惜しいミドルシュートもあった。さらに、守備面でも、いくつかオッと思わせるボール奪取やサイドバックが抜けた穴をいち早くカバーするなど、攻守両面に渡りポテンシャルを発揮したと思う。

僕がUAE戦を見て思ったのは、大島僚太は、将来、日本代表で遠藤保仁のような存在になるであろう、ということである。 派手さはないが、戦況に応じてパスを配給できる戦術眼、いわゆるセンスがある。それに、あまり注目されていないがミドルシュートも持っている。残念ながら今節では結果に結びつかなかったが、今後の最終予選でプレーする機会を得られれば、自ずと結果は出てくるであろう。

試合後、本田圭佑から「もっと全体を見渡せ」という内容のアドバイスがあったと報道されているが、大島の持つポテンシャルを評価したからこそのアドバイスだと感じる。

当然、守備面では、物足りなさもある。というか、まだまだ世界で戦うレベルには至っていない。 だが、これからもっとフィジカル面の向上や、デュエルでの勝率を上げるためのトレーニングを積めば、遠藤のような不動のレギュラーになれる可能性もあると思う。

次節は9/6、アウェイでのタイ戦

次のタイ戦では、勝利が必須となる。万が一敗れることがあれば、ハリル監督の解任論が出てもおかしくない。 タイはFIFAランクでは格下とは言え、近年成長著しく、侮れない相手だ。 タイ代表の初戦は、サウジアラビア相手に善戦したものの、日本代表同様に「怪しい」判定で与えたPKによる失点で黒星を喫している。 実際に、サウジ戦の映像を見たが、かなり惜しいシュートもあり、決して油断はできないという印象を受けた。 UAE以上に守備的な戦術を取るであろう相手を、どう崩すかがキーとなるだろう。

個人的には、浅野や大島、遠藤航といった若手の活躍に期待したい。